協働ロボットと産業用ロボットの基本的な違い
協働ロボットと産業用ロボットは、いずれも製造業や産業分野において重要な役割を果たしていますが、その設計目的や使用環境には大きな違いがあります。
ここでは、これらのロボットの基本的な違いについて詳しく説明します。
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設置スペースとサイズ
産業用ロボットは、通常、大型で重厚な装置が多く、専用の安全柵や隔離ゾーンが必要です。
これは、人間が近づくと危険が伴うためです。そのため、産業用ロボットを導入する際には広い設置スペースが要求されます。
一方、協働ロボットはコンパクトな設計であり、人間の作業員と共に狭いスペースで作業することが可能です。
設置が容易で、作業環境に柔軟に対応できるため、場所を選ばないのが特徴です。
安全性と作業環境
安全性の面でも大きな違いがあります。
産業用ロボットは、高速かつ高精度で動作するため、安全柵やセンサーで囲むことが必須です。
これに対して、協働ロボットはISO 10218-1:2011の要求事項に適合し、安全機能が充実しています。人間の近くで作業ができるように設計されており、力が加わった際に即座に停止する機能や低速で動作するモードなどが搭載されています。
そのため、安全かつ効率の高い作業環境を創り出すことができます。
可搬重量と動作速度
産業用ロボットは、大きなサイズの部品や材料を扱うことが可能で、その可搬重量は非常に大きいです。動作速度も高速で、量産体制においても非常に効率的です。
これに対して、協働ロボットは比較的軽量な物を扱うことが多く、動作速度も産業用ロボットほど高速ではありません。しかし、変種変量の作業に柔軟に対応することができるため、小規模生産やカスタマイズの多い製造環境に適しています。
プログラミングと操作性
産業用ロボットのプログラミングは専門的で高度な知識が要求されます。複雑な動作や精密な作業を実現するため、一度設定されると変更には時間がかかることが多いです。
一方で、協働ロボットはティーチングが簡単で、操作性に優れています。直感的なインターフェースと簡易なプログラミングで、非専門家でも容易に操作が可能です。このため、短期間での導入や運用がしやすく、中小企業においても利用が進んでいます。
協働ロボットの特徴と利点
ヒューマンフレンドリーな作業
協働ロボットは、産業用ロボットと異なり、人間の作業員と一緒に働くように設計されています。
この特性により、工場や製造現場での危険な作業や重労働を手助けし、安全かつ効率の高い作業環境を実現できます。
具体的には、協働ロボットは安全機能が充実しており、人間に危害を加えるリスクが非常に低いです。
そのため、協働ロボットは安全柵なしで人間と近い距離で作業することが許されており、作業スペースを有効に活用することができます。
人手不足の解消
多くの企業が直面している課題の一つが人手不足です。協働ロボットはこの問題を解決する強力な手段として注目されています。
協働ロボットは簡単にティーチング(プログラミング)でき、短期間で作業に投入することが可能です。これにより、繰り返しの多い単調な作業を自動化し、作業員がより価値の高い作業に集中できるようになります。
また、夜間や休日にも途切れず稼働するため、生産性の向上に寄与します。
柔軟な作業環境への対応
協働ロボットは柔軟な作業環境に対応できます。産業用ロボットと違い、位置制御と力制御の制御が可能であるため、さまざまな製造工程や作業条件に適応します。
また、導入と設置も簡単で、設置スペースを選ばないため、多様な工場レイアウトに適合します。これにより、変種変量生産やカスタマイズ製品の生産にも対応可能です。
結果として、協働ロボットはコスト効果が高く、迅速な生産ラインの変更を容易に実現します。
産業用ロボットの特徴と利点
高精度で高速な作業
産業用ロボットは、その設計と性能により、高精度で高速な作業を実現します。
例えば、自動車の組立ラインでは、ミリ単位の誤差を許さない部品の取り付けや溶接作業が求められます。
産業用ロボットはこうした精密な作業を高い速度で行うことができ、製品の品質を維持するとともに、作業時間を大幅に短縮することができます。
大量生産向けの効率性
大量生産の現場では、効率性が重要なポイントとなります。
産業用ロボットは、一度設定すれば同じ動作を繰り返して行うため、長時間にわたって安定した生産を続けることが可能です。
また、人間の作業員と比べて疲労や休憩が必要ないため、24時間体制での生産が可能となります。このため、大量生産に向いていると言えます。
産業用?協働?どちらを選ぶべきか
用途に応じた選択のポイント
ロボットを選ぶ際には、まず用途を明確にすることが重要です。
産業用ロボットは、大量生産や高精度な作業を要求する場面において、その性能を十分に発揮します。
例えば、重い部品の搬送や高速な組立作業が必要な場合、産業用ロボットが最適です。このような状況では、高い可搬重量と動作速度を持つ産業用ロボットが多く導入されています。
一方、協働ロボットは人間と一緒に作業することが前提となっているため、柔軟性や安全性が重視されます。
例えば、人手不足が課題となる職場や、変種変量製品の生産ラインなど、適応性の高さが求められる状況において協働ロボットは非常に有効です。
協働ロボットは危険な作業や労力の要る作業を手助けし、安全性の高い作業環境を実現することができます。
コストと導入のしやすさ
コスト面でも産業用ロボットと協働ロボットには違いがあります。
産業用ロボットは一般的に高価で、初期導入コストが大きくなりますが、高速作業や大量生産により長期的な視点から見ると費用対効果が高いです。
一方、協働ロボットは比較的低コストで導入が可能であり、設置スペースも少なく済みます。
特に中小企業にとって、初期投資を抑えながら生産性を向上させる選択肢として協働ロボットが人気です。
また、協働ロボットは操作やプログラミングの面でも導入しやすさが魅力です。
ティーチングが簡単であり、特別な専門知識がなくても扱えるため、現場の作業員による迅速な導入が可能です。
産業用ロボットは、高精度なプログラミング技術が求められ、それに伴い高度な技術者が必要になることがあります。
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協働ロボットのメーカー紹介
協働ロボットは人間の作業員と一緒に安全に作業ができるように設計されており、各産業において柔軟な運用が求められています。
ここでは、代表的な協働ロボットのメーカーについて紹介します。
まず、ユニバーサルロボット(Universal Robots)があります。
ユニバーサルロボットはデンマークに本社を置き、軽量でフレキシブルな協働ロボットを提供しています。同社の製品は設置が簡単で、プログラミングも直感的に行えるため、初めてロボットを導入する企業にも適しています。
次に、ファナック(FANUC)も協働ロボットの主要メーカーの一つです。
日本を拠点とするファナックは、高速かつ高精度な産業用ロボットでよく知られていますが、近年では協働ロボットの開発にも力を入れています。ファナックの協働ロボットは、自動車業界などの大規模な製造ラインでも活躍しています。
また、安川電機(Yaskawa Electric)も注目のメーカーです。
安川電機の協働ロボットは、安全性が高く、複雑な作業環境にも対応できる点が特徴です。特に精密で繊細な作業が求められる場面で優れたパフォーマンスを発揮します。
さらに、ABBも協働ロボット市場で大きなシェアを持つ企業です。
ABBの協働ロボットは、多様な産業用アプリケーションに適用できるため、食品製造からエレクトロニクスまで幅広い業種で使用されています。
これらのメーカーは、それぞれ独自の特徴と利点を持つ協働ロボットを提供しています。
導入を検討する際には、自社の業務内容や求める機能に合わせて最適なメーカーを選ぶことが重要です。
未来のロボット技術と展望
法規制の緩和と技術の進化
ロボット技術の進化とともに、法規制の緩和が進んでいます。
具体的には、協働ロボットに関する安全基準が定められたISO 10218-1:2011の要求事項が広く受け入れられ、より多くの産業で導入が進んでいます。80W規制の緩和も、協働ロボットの普及に大きな影響を与えています。
このような規制の緩和に伴い、ロボットの安全性技術も大幅に進化し、作業員と協働する環境がより安全に整備されるようになりました。
ロボット技術の新たな応用例
近年、協働ロボットや産業用ロボットは新たな応用例としてさまざまな産業で活用されています。
例えば、自動車の組立ラインでは、協働ロボットがウインドウの搭載作業を手助けすることで効率化を図っています。加えて、産業用ロボットは重量物の取り扱いや高速・高精度な加工が求められる製造現場で活躍しています。
今後さらに、医療、農業、物流など多岐にわたる分野でのロボット技術の導入が期待されており、これにより生産性の向上と人手不足の解消が進むことでしょう。
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